リトアニア農民・緑の連合(LVŽS; Lietuvos valstiečių ir žaliųjų sąjunga)は、リトアニアの中道左派政党。メディアなどでは「農民派」(Valstiečiai)とも称される。欧州議会では欧州保守改革グループ(ECR)に所属している。
2016年から2020年まで政権与党。両大戦間期に存在したリトアニア農民人民連合(LVLS; Lietuvos valstiečių liaudininkų sąjunga)の伝統を受け継ぐとして、地方や農村部の利益を代表する政党を目指す。地方分権や環境保護を訴え、再生可能エネルギーの促進に取り組むほか、土地の外国人への売却に反対するなどの政策を掲げる。
支部数は60、党員数は4000人以上(2020年現在)。
支持基盤とする地域
2020年の国会議員選挙で農民・緑の連合は、三大都市(ヴィルニュス、カウナス、クライペダ)よりもそれ以外の自治体で得票率を伸ばした。また、在外公館での投票では得票率は6.1%にとどまっており、在外リトアニア人のあいだでは支持が広がっていないことが確認された。
下の地図を見ると、特に北西部のジェマイティヤ地方で農民・緑の連合の得票率が高かったことが確認できる。
なお、2020年国会議員選挙・比例での各党の得票率について、詳しくは別の記事を参照のこと。
党史
1990年、リトアニア農民連合(LVS; Lietuvos valstiečių sąjunga)として結党。
1992年国会議員選挙では141議席中1議席を獲得。
1994年、リトアニア農民党(LVP; Lietuvos valstiečių partija)に改称。
1995年、青年組織「ヴァルパス」(Varpas、「鐘」の意)を設立。
1996年国会議員選挙では141議席中1議席を獲得。
1998年、ラムーナス・カルバウスキス(Ramūnas Karbauskis)が党首に選出される。
2000年国会議員選挙で141議席中4議席を獲得。
2001年、新民主党(NDP)と合併し、農民党・新民主党連合(VNDS; Valstiečių ir Naujosios demokratijos partijų sąjunga)となる。新民主党の党首だったカジミエラ・プルンスキエネ(Kazimiera Prunskienė)元首相が新党の党首に選出される。
2004年欧州議会議員選挙では、リトアニアに割り当てられた13議席のうち1議席を獲得。ギンタラス・ディジョカス(Gintaras Didžiokas)が欧州議会議員に選出される。同年行われた国会議員選挙では、141議席中10議席を獲得。その後、国会内でポーランド人選挙活動(LLRA)と同一会派を組む。
2005年、リトアニア農民人民連合(LVLS; Lietuvos valstiečių liaudininkų sąjunga)に改称。この党名は、両大戦間期に存在した政党に因む。
2008年国会議員選挙で141議席中3議席を獲得。
2009年、プルンスキエネに代わってカルバウスキスが党首に就任。プルンスキエネは同年LVLSを離党。同年行われた欧州議会議員選挙では、議席を獲得することができなかった。
2012年、リトアニア農民・緑の連合(LVŽS; Lietuvos valstiečių ir žaliųjų sąjunga)に改称。緑の連合(LŽS)とともにヴィサギナス原発建設の是非を問う国民投票の実施を求める運動を起こす。同年行われた国会議員選挙では、比例で得票率が3.9%にとどまり議席を獲得できず、小選挙区でもシャウレイ・カイミシュコイ(Šiaulių kaimiškoji)選挙区の1議席しか獲得することができなかった(同選挙区からはリマ・バシュキエネ(Rima Baškienė)候補が選出された)。なお、この選挙では、比例で、緑の連合(LŽS)の党員数人が農民・緑の連合のリストから立候補した。
2014年の欧州議会議員選挙ではリトアニアに割り当てられた11議席のうち1議席を獲得。ブロニス・ロペ(Bronis Ropė)元イグナリナ地区自治体長が欧州議会議員に選出される。
2016年の国会議員選挙では、サウリュス・スクヴェルネリス(Saulius Skvernelis)内相を同党のリスト第1位としたことで支持を大きく広げた。比例では得票率21.5%で祖国連合(TS-LKD)に次ぐ第2位となり70議席中19議席を獲得、小選挙区で71議席中35議席を獲得し、合わせて54議席獲得と大躍進を遂げた。選挙後、スクヴェルネリスが首相に選出され、リトアニア社会民主党(LSDP)との連立内閣が発足した。なお、農民・緑の連合党首のカルバウスキスは内閣には加わらず。また、同党所属のヴィクトラス・プランツキエティス(Viktoras Pranckietis)が国会議長に就任した。社会民主党は2017年に連立から離脱、同党から除名された議員を中心に結成された社会民主労働党(LSDDP)が2018年に連立に加わった。さらに2019年には秩序と正義(TT)とリトアニア・ポーランド人選挙活動゠キリスト教家族連合(LLRA-KSŠ)が連立に加わるも、秩序と正義は数カ月で連立を離脱した(秩序と正義が連立に加わっていたのは2019年7月から10月まで)。
2017年2月、農民・緑の連合の英称をそれまでの「Lithuanian Peasant and Greens Union」から「Lithuanian Farmers and Greens Union」に変更。リトアニア語の名称は変わらず(なお、リトアニア語の valstiečiai は farmers よりも peasants に近い意味をもつ)。
2019年の大統領選挙にスクヴェルネリス首相が立候補した際、農民・緑の連合は社会民主労働党とともに同氏を支持。スクヴェルネリスはギタナス・ナウセダ(Gitanas Nausėda)候補(無所属)およびイングリダ・シモニーテ(Ingrida Šimonytė)候補(祖国連合支持)に次ぐ得票率で敗れる。選挙後、スクヴェルネリスは首相職の辞任を示唆するも、2020年までその職を全うした。
大統領選挙と同時期に行われた欧州議会議員選挙では、リトアニアに割り当てられた11議席のうち2議席を獲得。現職のロペに加え、元バスケットボール選手のライモンダス・シャルーナス・マルチュリョニス(Raimondas Šarūnas Marčiulionis)が当選するも、マルチュリョニスが欧州議会議員への就任を固辞したため、代わりにスタシース・ヤケリューナス(Stasys Jakeliūnas)元国会議員が欧州議会議員に就任した。
同年、農民・緑の連合のヴィルギニユス・シンケヴィチュス(Virginijus Sinkevičius)経済イノベーション相が欧州委員に就任(環境・海洋・漁業担当)。
同年、カルバウスキス党首がプランツキエティスに対して国会議長の辞任を求める。プランツキエティスはこれを拒否、農民・緑の連合を離党した。なお、プランツキエティスは翌年11月、自由運動(LRLS)に入党した。
2020年10月に行われた国会議員選挙で農民・緑の連合は、比例で得票率18.1%で祖国連合に次ぐ第2位となり、70議席中16議席を獲得。小選挙区では71議席中16議席を獲得した。比例と合わせて32議席の獲得にとどまり、祖国連合に敗北、下野することとなった。同年11月、カルバウスキス党首が、イングリダ・シモニーテ新首相率いる連立内閣の国会運営に抗議し、国会議員を辞職(カルバウスキスに代わってアスタ・クビリエネ(Asta Kubilienė)が国会議員となる)。カルバウスキスは、党首は引き続き務めるとした。
2021年、スクヴェルネリス前首相と同氏に近い議員らがリトアニア農民・緑の連合を離党。スクヴェルネリスらは翌年、新党・民主連合「リトアニアの名のもとに」を結成。
2024年の大統領選挙で、農民・緑の連合は当初、同党に所属するアウレリユス・ヴェリーガ(Aurelijus Veryga)元保健相を候補者とするとしていたが、のちにこれを撤回してヴェリーガ元保健相の立候補を取り下げ、無所属のイグナス・ヴェゲレ(Ignas Vėgėlė)候補を支持。第1回投票でヴェゲレ候補は得票率12.4%で3位となり、決選投票には進出できなかった。
同年の欧州議会議員選挙でリトアニア農民・緑の連合は、リトアニアに割り当てられた11議席のうち1議席を獲得。ヴェリーガが欧州議員に選出された。リトアニア農民・緑の連合の議員はこれまで、欧州議会では欧州緑グループ・欧州自由連盟(Greens-EFA)に所属していたが、2024年選挙後は欧州保守改革グループ(ECR)に所属することとなった。
同年の国会議員選挙では、ヴェゲレを同党の顔とし、「ヴェゲレ・チーム2024」としてキャンペーンを行っている。
選挙結果
国会議員選挙
- 1992年 – 1議席
- 1996年 – 1議席
- 2000年 – 4議席
- 2004年 – 10議席
- 2008年 – 3議席
- 2012年 – 1議席
- 2016年 – 54議席
- 2020年 – 32議席
地方議会議員選挙
- 1995年 – 104議席
- 1997年 – 84議席
- 2000年 – 209議席
- 2002年 – 190議席
- 2007年 – 153議席
- 2011年 – 147議席
- 2015年 – 140議席(うち4議席は自治体長)
- 2019年 – 223議席(うち6議席は自治体長)
欧州議会議員選挙
- 2004年 – 1議席(全13議席中)
- 2009年 – 0議席(全12議席中)
- 2014年 – 1議席(全11議席中)
- 2019年 – 1議席(全11議席中)
- 2024年 – 1議席(全11議席中)
歴代党首
リトアニア農民連合(LVS)
- 1990〜1994年 – ペトラス・ベチュス(Petras Bėčius)
リトアニア農民党(LVP)
- 1994〜1998年 – アルビナス・ヴァイジュムジス(Albinas Vaižmužis)
- 1998〜2001年 – ラムーナス・カルバウスキス(Ramūnas Karbauskis)
農民党・新民主党連合(VNDS)
- 2001〜2005年 – カジミエラ・プルンスキエネ(Kazimiera Prunskienė)
リトアニア農民人民連合(LVLS)
- 2005〜2009年 – カジミエラ・プルンスキエネ(Kazimiera Prunskienė)
- 2009〜2012年 – ラムーナス・カルバウスキス(Ramūnas Karbauskis)
リトアニア農民・緑の連合(LVŽS)
- 2012年〜 – ラムーナス・カルバウスキス(Ramūnas Karbauskis)
党員数の推移
- 2012年 – 2,663人
- 2013年 – 2,805人
- 2014年10月1日 – 3,086人
- 2015年10月1日 – 3,423人
- 2016年10月1日 – 3,679人
- 2017年10月1日 – 4,274人
- 2018年3月1日 – 4,312人
- 2018年10月1日 – 4,332人
- 2019年10月1日 – 4,329人
- 2020年3月1日 – 4,295人
- 2020年10月1日 – 4,292人
- 2021年10月1日 – 4,372人
- 2022年3月1日 – 3,854人
- 2022年10月1日 – 3,765人
- 2023年3月1日 – 3,741人
- 2023年10月1日 – 3,746人
- 2024年3月1日 – 3,799人
出典・参考文献
- „Politinių organizacijų narių sąrašai [政治団体構成員一覧]“ – Lietuvos Respublikos teisingumo ministerija [リトアニア共和国法務省ウェブサイト]
- „Lietuvos valstiečių ir žaliųjų sąjunga [リトアニア農民・緑の連合],“ Lietuvos istorija: Enciklopedinis žinynas [リトアニアの歴史——百科事典], t.II (Vilnius: Mosklo ir enciklopedijų leidybos centras, 2016).
- „Lietuvos valstiečių ir žaliųjų sąjunga [リトアニア農民・緑の連合]“ – Visuotinė lietuvių enciklopedija [リトアニア百科事典]