2020年国会選・比例での得票率

2020年リトアニア国会議員選挙について

リトアニアの国会(セイマス)議員選挙では、141議席のうち71議席が小選挙区で、70議席が比例全国区で選ばれる。
第1回投票では小選挙区と比例代表ともに投票が行われ、小選挙区で過半数を獲得した候補者がいない場合には、2週間後に上位2名の候補者による決選投票が行われる。

2020年の選挙は、第1回投票が10月11日(日)に行われた(小選挙区の決選投票は10月25日(日))。比例で議席を獲得した政党は以下の6つである。

祖国連合゠リトアニア・キリスト教民主主義(TS-LKD) 23議席(得票率24.9%)
農民・緑の連合(LVŽS) 16議席(17.4%)
労働党(DP) 9議席(9.4%)
リトアニア社会民主党(LSDP) 8議席(9.3%)
自由党(LP) 8議席(9.1%)
リトアニア共和国自由運動(LRLS) 6議席(6.8%)

主要2政党の比例での得票率

与党の農民・緑の連合(LVŽS)と野党第1党の祖国連合゠リトアニア・キリスト教民主主義(TS-LKD)の比例での得票率は、以下のとおりとなった。

LVŽSが地方(特に北西部のジェマイティヤ地方)で多くの票を獲得した一方で、TS-LKDはヴィルニュス、カウナス、クライペダなどの都市部を中心に票を伸ばした。

農民・緑の連合(LVŽS)の得票率

祖国連合゠リトアニア・キリスト教民主主義(TS-LKD)の得票率

以下は両党の得票率の比較である。やはり、ヴィルニュス、カウナス、クライペダでTS-LKDの得票率が大きく上回っていてことがわかる。

LVŽSTS-LKDの得票率の差

(画像ファイル : カラー / カラー(青・赤)) / グレースケール

国外/3大都市/その他自治体における得票率

3大都市(ヴィルニュス市、カウナス市、クライペダ市)での各党の得票率と、それ以外の自治体での得票率を比較すると、TS-LKDのように都市部で票を多く獲得した政党と、逆に地方で票を多く集めた政党の違いが見えてくる。ここでは、在外公館で行われた投票における得票率も合わせて比較する。

国外/3大都市/その他自治体における各党の得票率

(画像ファイル : カラー / グレースケール

上を見ると、TS-LKDのほかに自由党(LP)も都市部やリトアニア国外で多くの票を集めていることがわかる。LPは2019年にできたばかりの新しい政党で、個人の自由の尊重やLGBTの権利擁護、大麻の合法化などを掲げている。都市部のなかでも特に若者からの支持を多く集めていると見られる。

他方、LVŽSに加えて労働党(DP)リトアニア社会民主党(LSDP)などは地方に支持基盤があることがわかる。

その他政党の比例での得票率

その他政党の得票率は以下のとおりとなった。

各党の得票率

(1段目左から)労働党(DP)リトアニア社会民主党(LSDP)自由党(LP)
(2段目左から)リトアニア共和国自由運動(LRLS)リトアニア・ポーランド人選挙活動゠キリスト教家族連合(LLRA-KŠS)リトアニア社会民主労働党(LSDDP)
(3段目左から)中道党゠民族主義(CP-T)、自由と正義(LT)、リトアニア緑の党(LŽP)

DPLSDPLPは全国的に広く票を集めたが、先に見たようにDPLSDPが地方で、LPが都市(特にヴィルニュス市)で特に得票率を伸ばしている。
DPは、党の創立者であり党首を務めるヴィクトル・ウスパスキフが地盤とする中部ケダイネイ周辺で特に得票率が高い。
LPの得票率が特にヴィルニュス市で高いのは、LPLRLSヴィルニュス支部の党員らを中心に結党されたためである。

LLRA-KŠSは、今回もヴィルニュス地区(ヴィルニュス市ではなくその周辺)やシャルチニンカイなどポーランド人が多く住む地域で局所的に大量の票を獲得した。また、ロシア人が多く住む北東部のヴィサギナスでも得票率が高かった。しかし、LLRA-KŠSは今回、比例での得票率が5%に達しなかったため、議席の獲得はならなかった。

そのほかの政党は、有力な政治家が地盤とする地域で局所的に票を獲得しつつも、全国的には支持が広がっていない。
例えば、LSDDPは中西部のシルヴィントスで支持を集めているが、これはシルヴィントス地区自治体長のピンスクヴィエネ(Živilė Pinskuvienė)元DP党首の影響力だろう(今回の選挙では夫のピンスクス(Jonas Pinskus)がモレタイ゠シルヴィントス(第54)選挙区から立候補している)。
CP-Tは、クリヴィツカス(Kristupas Krivickas)副党首が地盤とするウクメルゲでの得票率が相対的に高い。
前回ほとんど票を獲得できなかったLŽPは、今回は南西部のヴィルカヴィシュキスで得票率が上がっている。これは、同地を地盤とするブトケヴィチュス(Algirdas Butkevičius)元首相(LSDPを離党し現在無所属)が、LŽPのリストから出馬していることの影響だろう(ブトケヴィチュスはのちに小選挙区(ヴィルカヴィシュキス(第68)選挙区)で当選)。しかし、全国で見ると得票率はわずか1.6%にとどまっている。

出典・参考文献

Lietuvos Respublikos vyriausioji rinkimų komisija [リトアニア共和国選挙最高委員会公式ウェブサイト]