祖国連合゠リトアニア・キリスト教民主派(TS-LKD)

祖国連合゠リトアニア・キリスト教民主派(TS-LKD; Tėvynės sąjunga – Lietuvos krikščionys demokratai)は、1993年に設立されたリトアニアの中道右派政党。一般に広く「保守派」(konservatoriai)と称される。欧州レベルでは欧州人民党(EPP)に所属している。

前身の祖国連合(リトアニア保守派)時代を含め、1996〜2000年および2008〜2012年に政権与党。2012年に下野したが、2020年の選挙で勝利を収め、政権に返り咲いた。

党内にリトアニア・キリスト教民主派、政治犯・被追放者派、民族主義派の3つの派閥を抱える。支部数は81(うち国外はブリュッセルとワシントンDCの2支部)。党員数は約1万3700人(2020年現在)で、リトアニア社会民主党(LSDP)に次いで多い。

政策・支持基盤とする地域

結党以来リトアニアのNATOおよびEUへの加盟を推進するなど、欧州統合に積極的。経済的には市場原理志向が強い(中井 2020: 145)。社会文化的価値観に関しては、従来は保守的な傾向が強かったが、2003年にアンドリュス・クビリュス(Andrius Kubilius)が党首となってからはリベラル化が進んでおり、2015年に党首に就任したガブリエリュス・ランズベルギス(Gabrielius Landsbergis)もリベラル化を進めている(Laučius 2024)。経済と社会文化の両面でリベラリズムを推し進めた結果、有権者の支持は広がった(特にヴィルニュス市内)が、他方で結党時に祖国連合を支持していた保守派が周縁化され、その一部が離党するなども起きている(Laučius 2024)。

2020年の国会議員選挙で祖国連合(TS-LKD)は、特に都市部や在外公館での投票で得票率を伸ばし、他党を圧倒した。他方で、それ以外の地域での得票率は2割程度だった。

2020年国会議員選挙・比例における各党の得票率

(画像ファイル : カラー / グレースケール

下の地図で見ても、祖国連合の得票率がヴィルニュスやカウナスで高かったことが確認できる。

2020年国会議員選挙・比例での祖国連合の得票率

なお、2020年国会議員選挙・比例での各党の得票率については別の記事を参照のこと。

党史

ソヴェト時代末期に独立運動を牽引してきたサーユーディス(Sąjūdis)の活動を継続する形で、1993年、祖国連合(リトアニア保守派)(TS(LK); Tėvynės sąjunga (Lietuvos konservatoriai))として結党される。サーユーディスを率いたヴィータウタス・ランズベルギス(Vytautas Landsbergis)が党首に選出される。ランズベルギスはその後2003年まで党を率いた。

1996年の国会議員選挙では141議席中70議席を獲得し、勝利を収める。ゲディミナス・ヴァグノリュス(Gediminas Vagnorius)が首相に就任。その後1999年6月からはロランダス・パクサス(Rolandas Paksas)が首相を務めたが、10月に辞任。パクサスは祖国連合を離党し、リトアニア自由連合(LLS)に入党した。

1997年末に行われた大統領選挙ではランズベルギス党首が立候補するも、15.9%の得票率にとどまり、敗北。

1999年、祖国連合の議員の一部が離党し、新たに祖国人民党(TLP)を結党。

2000年、ヴァグノリュスらが離党し、新たに穏健保守連合(NKS)を結党。

同年の国会議員選挙で祖国連合は計9議席を獲得するにとどまり、大敗を喫する。祖国連合は下野。

2003年、ランズベルギスに代わってアンドリュス・クビリュス(Andrius Kubilius)が党首となる。同年、リトアニア右派連合(LDS)と合併し、党名を「祖国連合(保守派、キリスト教民主派、自由戦士)」(Tevynės sąjunga (konservatoriai, krikščioniškieji demokratai, laisvės kovotojai))に改める。さらに2004年にリトアニア政治犯・被追放者連合(LPKTS; Lietuvos politinių kalinių ir tremtinių sąjunga)と合併し、党名を「祖国連合(保守派、政治犯・被追放者、キリスト教民主派)」(Tevynės sąjunga (konservatoriai, politiniai kaliniai ir tremtiniai, krikščioniškieji demokratai))に改める。党内に政治犯・被追放者派が結成され、ポヴィラス・ヤクチョニス(Povilas Jakučionis)が派閥の領袖となる。

2004年の欧州議会議員選挙ではリトアニアに割り当てられた13議席のうち2議席を獲得。同年の国会議員選挙では計25議席を獲得、野党にとどまる。

2008年、リトアニア人民族主義連合を吸収合併、党内に民族主義派が結成される。同年、リトアニア・キリスト教民主派(LKD; Lietuvos krikščionių demokratai)と合併し、党名を現在の「祖国連合゠リトアニア・キリスト教民主派」(TS-LKD)に改める。クビリュスが新党の党首となり、LKDの党首だったヴァレンティナス・ストゥンディース(Valentinas Stundys)が副党首となった。

2008年の国会議員選挙では45議席を獲得し、国民復興党(TPP)、自由運動(LRLS)、自由中道連合(LiCS)と連立を組む。祖国連合党首のクビリュスが首相に就任。

2009年の欧州議会議員選挙ではリトアニアに割り当てられた12議席のうち4議席を獲得。

2011年、党員の一部が離党して民族主義連合(Tautininkų sąjunga)を結成する。

2012年の国会議員選挙では33議席の獲得にとどまり、下野。

2004年の欧州議会議員選挙ではリトアニアに割り当てられた11議席のうち2議席を獲得。

2015年、クビリュスにガブリエリュス・ランズベルギス(Gabrielius Landsbergis)が代わって党首に就任。なお、ガブリエリュス・ランズベルギスは、祖国連合の初代党首であるヴィータウタス・ランズベルギス元最高会議議長の孫。

2016年の国会議員選挙では31議席の獲得にとどまり、政権奪取ならず。

2017年2月12日に実施された党首選の結果、ガブリエリュス・ランズベルギスが党首に再任。

2019年の欧州議会議員選挙ではリトアニアに割り当てられた11議席のうち3議席を獲得。同時期に行われた大統領選挙ではイングリダ・シモニーテ(Ingrida Šimonytė)候補(無所属)を支持。シモニーテ候補は、決選投票の結果ギタナス・ナウセダ(Gitanas Nausėda)候補に敗れた。

2019年、リマンタス・ヨナス・ダギース(Rimantas Jonas Dagys)議員が離党し、翌年、新たにキリスト教連合(Krikščionių sąjunga)を結党。

2020年の国会議員選挙で祖国連合は、比例で70議席中23議席を獲得(得票率25.8%)、小選挙区では71議席中27議席を獲得し、計50議席で第1党に返り咲いた。その結果、シモニーテ(無所属)を首相とする祖国連合・自由運動自由党(LP)3党による連立内閣が発足。ガブリエリュス・ランズベルギス党首は外相として入閣した。なお、シモニーテは、2022年12月に祖国連合に入党した。

選挙結果

国会議員選挙

  • 1996年 – 70議席
  • 2000年 – 9議席
  • 2004年 – 25議席
  • 2008年 – 45議席
  • 2012年 – 33議席
  • 2016年 – 31議席
  • 2020年 – 50議席

地方議会議員選挙

  • 1995年 – 428議席
  • 1997年 – 493議席
  • 2000年 – 199議席
  • 2002年 – 193議席
  • 2007年 – 256議席
  • 2011年 – 249議席
  • 2015年 – 253議席(うち11議席は自治体長)
  • 2019年 – 274議席(うち11議席は自治体長)

欧州議会議員選挙

  • 2004年 – 2議席(全13議席中)
  • 2009年 – 4議席(全12議席中)
  • 2014年 – 2議席(全11議席中)
  • 2019年 – 3議席(全11議席中)

歴代党首

  • 1993〜2003年 – ヴィータウタス・ランズベルギス(Vytautas Landsbergis)
  • 2003〜2015年 – アンドリュス・クビリュス(Andrius Kubilius)
  • 2015〜 – ガブリエリュス・ランズベルギス(Gabrielius Landsbergis)

党員数の推移

  • 2012年 – 12,336人
  • 2013年 – 12,383人
  • 2014年10月1日 – 14,273人
  • 2015年10月1日 – 15,039人
  • 2016年10月1日 – 14,920人
  • 2017年10月1日 – 14,598人
  • 2018年3月1日 – 14,523人
  • 2018年10月1日 – 14,243人
  • 2019年10月1日 – 13,931人
  • 2020年3月1日 – 13,957人
  • 2020年10月1日 – 13,772人

出典・参考文献