自由運動(LS)

自由運動(LS; Liberalų sąjūdis)は、2006年に設立されたリトアニアの自由主義政党。一般に広く「リベラル派」(liberalai)と称される。2022年までの正式名称はリトアニア共和国自由運動(LRLS; Lietuvos Respublikos Liberalų sąjūdis)。

欧州レベルでは欧州自由民主同盟(ALDE)に、欧州議会では欧州刷新(Renew Europe)に所属している。経済的には市場原理志向が強い(中井 2020: 147)。

支部数は55(うち5支部は国外)、党員数は約6,600人(2024年現在)。

党史

2006年、自由中道連合(LiCS)のアルトゥーラス・ズオカス(Artūras Zuokas)党首に異を唱える党員らが、自由中道連合を離党して新たにリトアニア共和国自由運動(LRLS)を設立。ペトラス・アウシュトレヴィチュス(Petras Auštrevičius)が党首に就任。なお、2007年の時点で10人の国会議員が同党の国会会派に所属していた。

2008年、アウシュトレヴィチュスに代わってエリギユス・マシュリス(Eligijus Masiulis)が党首に就任。同年行われた国会議員選挙で自由運動は11議席を獲得。祖国連合(TS-LKD)、国民復興党(TPP)、自由中道連合と連立を組む。自由運動からは、マシュリス(運輸通信相)、ギンタラス・ステポナヴィチュス(Gintaras Steponavičius)(教育科学相)、レミギユス・シマシュス(Remigijus Šimašius)(法相)の3人が入閣。

2009年の欧州議会議員選挙では、リトアニアに割り当てられた12議席のうち1議席を獲得。哲学者のレオニダス・ドンスキス(Leonidas Donskis)が欧州議会議員となる。

2012年の国会議員選挙では10議席を獲得。選挙後は中道左派連立政権が発足し、自由運動は野党となる。なお、この選挙で自由中道連合が議席をすべて失いその後低迷したため、これ以降「リベラル派」(liberalai)といえば一般に自由運動のことを指すようになった。

2014年の欧州議会議員選挙では、リトアニアに割り当てられた11議席のうち2議席を獲得。アウシュトレヴィチュス前党首とポーカー・プレイヤーとして知られていたアンタナス・グオガ(Antanas Guoga)が欧州議会議員となる。

2015年の地方議会議員選挙では、計217議席を獲得。うち自治体長に選出されたのは9人で、シマシュス前法相がヴィルニュス市長に選出された。

2016年5月、マシュリス党首らが汚職に関わっていたことが発覚。マシュリスは党首を辞任、さらに国会議員も辞職し、自由運動を離党した。マシュリスに代わってグオガ欧州議会議員が暫定的に党首に就任するも、グオガは自由運動を離党(その後2020年に労働党(DP)に入党)。新たにシマシュス・ヴィルニュス市長が党首に就任した。

同年10月に行われた国会議員選挙で自由運動は14議席を獲得。

2017年、シマシュスに代わってエウゲニユス・ゲントヴィラス(Eugenijus Gentvilas)元自由中道連合党首が党首に就任。

2018年、シマシュス前党首が、翌19年に行われる地方選では自由運動からではなく独自に出馬するとした。これによりシマシュスと党のあいだで対立が生じ、党はシマシュスの党員資格を停止。同年、シマシュスが、党ヴィルニュス支部の支部長を務めていたアウシュリネ・アルモナイテ(Aušrinė Armonaitė)国会議員らとともに自由運動を離党。同支部に所属する党員らも離党した。なお、シマシュスとアルモナイテは、翌年自由党(LP)を設立した。

2019年、ゲントヴィラスに代わってチェス・プレイヤーとして知られるヴィクトリヤ・チミリーテ゠ニルスン(Viktorija Čmilytė-Nielsen)が党首に就任。同年の欧州議会議員選挙で自由運動は、リトアニアに割り当てられた11議席のうち1議席を獲得。現職のアウシュトレヴィチュス議員が引き続き欧州議会議員を務めた。

2020年の国会議員選挙では、比例で6.8%の得票率で6議席を獲得。小選挙区でも7議席を獲得し、合わせて13議席を獲得した。選挙後、チミリーテ゠ニルスン党首が国会議長に選出された。また、祖国連合自由党とともに連立政権(イングリダ・シモニーテ(Ingrida Šimonytė)首相)を構成。自由運動からは、シモナス・カイリース(Simonas Kairys)が文化相として、シモナス・ゲントヴィラス(Simonas Gentvilas)が環境相として、それぞれ入閣した。

2022年5月、党名から「リトアニア共和国」を削除し、自由運動(LS; Liberalų sąjūdis)を正式名称とすることを決定。合わせて党のロゴも刷新した。

2024年の大統領選挙で、自由運動は候補者を擁立せず。同年の欧州議会議員選挙では、自由運動はリトアニアに割り当てられた11議席のうち1議席を獲得。現職のアウシュトレヴィチュス議員が引き続き欧州議会議員を務めることとなった。同年の国会議員選挙では、自由運動とともに連立政権を構成していた与党の祖国連合自由党が大きく議席を減らすなか、自由運動は比例で7議席獲得(得票率7.70%)と健闘し、小選挙区で獲得した5議席と合わせて計12議席を獲得した。選挙後、社会民主党民主連合「リトアニアのために」による新政権に自由運動が加わることも検討されたが、経済政策などで距離のある社会民主党と自由運動が妥協点を見出すことは容易ではなく、最終的に社会民主党と民主連合は自由運動ではなく「ネムナスの夜明け」との連立政権を樹立することで合意した。これにより、自由運動は下野することとなった。

選挙結果

国会議員選挙

  • 2008年 –– 11 / 141 議席(比例 : 5 / 70 議席 = 得票率 5.41 % 、小選挙区 : 6 / 71 議席)
  • 2012年 –– 10 / 141 議席(比例 : 7 / 70 議席 = 得票率 8.57 % 、小選挙区 : 3 / 71 議席)
  • 2016年 –– 14 / 141 議席(比例 : 8 / 70 議席 = 得票率 9.06 % 、小選挙区 : 6 / 71 議席)
  • 2020年 –– 13 / 141 議席(比例 : 6 / 70 議席 = 得票率 6.79 % 、小選挙区 : 7 / 71 議席)
  • 2024年 –– 12 / 141 議席(比例 : 7 / 70 議席 = 得票率 7.70 % 、小選挙区 : 5 / 71 議席)

地方議会議員選挙

  • 2007年 –– 51 議席
  • 2011年 –– 98 議席
  • 2015年 –– 217 議席(うち 9 議席は自治体長)
  • 2019年 –– 126 議席(うち 6 議席は自治体長)
  • 2023年 –– 139 議席(うち 9 議席は自治体長)

欧州議会議員選挙

  • 2009年 –– 1 / 12 議席 = 得票率 15.63 %
    • レオニダス・ドンスキス(Leonidas Donskis)議員
  • 2014年 –– 2 / 11 議席 = 得票率 6.24 %
    • ペトラス・アウシュトレヴィチュス(Petras Auštrevičius)議員
    • アンタナス・グオガ(Antanas Guoga)議員
  • 2019年 –– 1 / 11 議席 = 得票率 5.31 %
    • ペトラス・アウシュトレヴィチュス(Petras Auštrevičius)議員

歴代党首

  • 2006〜2008年 –– ペトラス・アウシュトレヴィチュス(Petras Auštrevičius)
  • 2008〜2016年 –– エリギユス・マシュリス(Eligijus Masiulis)
  • 2016〜2017年 –– レミギユス・シマシュス(Remigijus Šimašius)
  • 2017〜2019年 –– エウゲニユス・ゲントヴィラス(Eugenijus Gentvilas)
  • 2019年〜 –– ヴィクトリヤ・チミリーテ゠ニルスン(Viktorija Čmilytė-Nielsen)

党員数の推移

  • 2012年 –– 3,645人
  • 2013年 –– 5,063人
  • 2014年10月1日 –– 6,038人
  • 2015年10月1日 –– 7,352人
  • 2016年10月1日 –– 7,979人
  • 2017年10月1日 –– 7,998人
  • 2018年3月1日 –– 7,890人
  • 2018年10月1日 –– 7,722人
  • 2019年10月1日 –– 6,986人
  • 2020年3月1日 –– 7,065人
  • 2020年10月1日 –– 7,119人
  • 2021年10月1日 –– 6,965人
  • 2022年3月1日 –– 6,908人
  • 2022年10月1日 –– 6,871人
  • 2023年3月1日 –– 6,708人
  • 2023年10月1日 –– 6,708人
  • 2024年3月1日 –– 6,657人
  • 2024年10月1日 –– 6,618人

出典・参考文献